空気清浄機は花粉対策にならない?空気清浄機に対するよくある誤解と正しい使い方

空気清浄機 高性能空気清浄機

春先は花粉対策としていろいろなグッズや製品が販売される時期です。空気清浄機も花粉対策としてこの時期に注目を集める商品の1つですが、その仕組みを正しく理解して使わないと期待した効果が得られません。空気清浄機に対するよくある誤解と正しい使い方について解説します。

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空気汚染物質についての基礎知識

室内の空気を汚染する物質には実に様々なものがあります。

引用:空気清浄機によるPM2.5対策技術(一般社団法人 日本電気工業会)

この時期の最も気になるのは花粉ですが、地域によっては大陸から飛来する黄砂や PM2.5などを除去したい人もいるでしょう。

インフルエンザや新型コロナウィルスの家庭内感染が心配な人は、ウィルス除去について関心があると思います。

タバコ臭、ペット臭、生ゴミ臭などのニオイを除去したい人や、シックハウス症候群で注目を集めたホルムアルデヒドなどの有機溶剤の揮散ガスを除去したい人もいるかもしれません。

実はこれらの物質のサイズは大きく異なっており、空気中での振る舞いも異なります。

参考資料:空気清浄機によるPM2.5対策技術(一般社団法人 日本電気工業会)、細菌とウイルスについて(日本板硝子株式会社)

主な空気汚染物質の大きさ (1μmは、1/1,000 mm)
汚染物質の種類 大きさ
花粉 10〜100μm
ダニのふん、死がい 4μm以上
PM2.5 2.5μm以下
ウィルス 0.01〜0.2μm

PM2.5やウィルスのように小さく軽い物質は、長い時間空気中に浮遊していますが、花粉のように大きく・重い物質は、短時間で地面に落下してしまいます。

また、ニオイや有毒ガスのような物質は、一般的な空気清浄機の集塵フィルターでは除去できませんので、物質にあった除去機能が必要となります。

空気清浄機で、これら様々な有害物質を除去するには、それぞれの物質の特性にあった仕組みが必要となります。

空気清浄機の機能と仕組み

さて、これらの様々な有害物質に対して、空気清浄機はどのような方法で対処しているのでしょうか?

一般社団法人 日本電気工業会の「空気清浄機によるPM2.5対策技術」のP.14〜P.17に掲載されている情報を整理すると、空気清浄機には大きく分けて以下の3つの機能・技術が搭載されています。

  1. 集塵機能
  2. 脱臭技術
  3. 除菌技術

以下に3つの機能・技術について説明していきます。

1.集塵機能

花粉だけでなく、繊維状粒子やPM2.5を含む一般粉じんを除去する機能です。集塵機能には大きく2つの種類があり、それぞれにメリット・デメリットが存在します。

フィルター方式

汚れた空気をファンで吸い込み、有害物質ごとに3種類のフィルターで除去していくものです。

プレフィルター 大きなホコリを取り除く
集塵フィルター プレフィルターで捕集できない花粉やカビなどを取り除く
脱臭フィルター 活性炭をベースにした吸着剤でニオイを取り除く

電気集塵方式

粉塵をイオン放出部を通過するときにイオン化し、捕集部にある電極板で電気的に吸着して除去するものです。イメージ図は、富士通ゼネラルの下記のページのものがわかりやすかったので引用します。(出典:「電気集じんのイイところ」富士通ゼネラル)

電気集塵方式

フィルター方式と電気集塵方式の比較

2つの集塵方式のメリット・デメリットを比較すると以下のようになります。

(HEPA)フィルター方式は、機構が単純で集塵性能が高いというメリットがある反面、ファンの消費電力が高く、運転音が大きくなりがちというデメリットがあります。

電気集塵方式は、ファンの消費電力が小さく、運転音が小さいというメリットがある反面、一過性集塵性能が高くなく、システムが複雑で本体価格が高くなるというデメリットがあります。

(HEPA)フィルター方式
電気集塵方式
メリット
一過性集塵性能が高い
・ファンの消費電力が小さい
・運転音が小さい
・集塵性能が低下しにくい
デメリット
・ファンの消費電力が高い
・運転音が大きい
・フィルターの目が詰まりやすい
・一過性集塵効率が高くない
・システムが複雑で価格が高い
・オゾン等の副生成物がある

「一過性集塵性能」とは、一回の吸引で集塵できる性能です。

HEPAフィルター(High Efficiency Particulate Air)とは、花粉やほこり、ウイルスなど、空気中のごく小さな粒子を捕集することができる「高性能な微粒子エアフィルター」のことです。(出典:パナソニック 「HEPAフィルターとは」)

 

2.脱臭技術

脱臭技術はタバコ臭、ペット臭、生ゴミ臭などのニオイを取り除く技術です。脱臭は、活性炭を使った物理吸着でニオイを取り除く方式が一般的です。

先に説明したフィルター方式では、活性炭を含む脱臭フィルターを1枚追加するだけで済みます。この方式では、複雑な仕組みを必要とせず、本体価格が安く抑えられます。

その他に、化学薬剤を使用した化学吸着、光触媒技術や放電技術を使った「分解再生方式」などがあります。

3.除菌技術

除菌技術には、大きく2つの方式があり、それぞれメリット・デメリットが存在します。空気清浄機を調べていくとよく目にするシャープのプラズマクラスターやパナソニックのナノイーなどは、イオンを発生させて室内空間で除菌する技術です。

室内空間で除菌 空気清浄機内で除菌
仕組み イオン(オゾンや二酸化塩素)を吹き出し、空気中で有害物質を分解 空気清浄機内のフィルターで菌を捕捉し、分解
メリット 空気清浄機から離れた場所でも除菌できる ・効率的に除菌
・安全性が高い
デメリット ・安全面から濃度を高められない
・ニオイが発生する場合あり
フィルターで捕捉したものしか除菌できない

 

空気清浄機は花粉対策にならない?

さて、以上のように、有害物質に対する基礎知識、空気清浄機の仕組みについてある程度理解できると、空気清浄機の正しい選び方・使い方がわかるようになります。

まず、誤解をしやすいのが、花粉に対する空気清浄機の正しい使い方です。

空気清浄機を使っても、花粉症の症状が軽くならない場合、以下の可能性が考えられます。

私自身も勘違いしていたのですが、花粉は、ウィルスやPM2.5粒子のように空気中を長時間浮遊しているわけではありません。花粉は室内で飛散してから割と短時間で床・カーペットに落ちてしまいます。そして、落ちた花粉は空気清浄機では除去できません。

このことは、スギ花粉とPM2.5の大きさを比較するとよくわかります。

人が歩き回ったり、エアコンを入れたりすると、再び床から花粉が舞い上がります。空気清浄機を利用しても室内での花粉症の症状が改善しない場合は、床に落ちている花粉が撒き散らされることがが原因かもしれません。

花粉に対する空気清浄機の効果的な使い方については、日本電気工業会の「空気清浄機によるPM2.5対策技術」P.8に書かれています。

帰宅時、家に入る前に、衣服や髪の毛に付いた花粉を玄関先でしっかり落とす。
重たい花粉はすぐに落下するので、大風量で運転して、床に落ちる前にキャッチ。
床に落ちてしまった花粉 は空気清浄機ではとれないので、こまめに掃除。(掃除機でもOK)

生活空間で花粉がどのように飛散していくのか、花粉に対する空気清浄機の効果を特殊カメラで撮影した映像がダイキンから提供されています。

加湿機能は必要?

最近の空気清浄機には、加湿機能が(機種によっては除湿機能も)ついているものが多く見受けられます。

空気清浄機を紹介する記事の中には、「有害物質のPM2.5対策に、加湿機能が有効である」と書いているものもあります。

放出された水分にPM2.5に吸着させ、除去しやすくする」というのがその理由のようですが、

私個人は 加湿機能と除去性能は無関係ではないかと考えています。(少なくとも、加湿機能と除去性能の関係を技術的に検証している文献は見つけられませんでした)

もちろん、室内の加湿を必要としていて、「加湿器と空気清浄機を別々に購入すると設置場所を取るので1つにまとめたい」という人は 加湿機能付き空気清浄機を検討するとよいと思います。

ただ、純粋に「室内の空気から有害物質を取り除きたい」だけの人にとっては、加湿機能は不要と考えます。

個人的には、過去に加湿器を購入したことがあるが、あまり使わなかったという理由もあります。

加湿機能がついた空気清浄機を購入する場合には以下の2点も考慮にいれたほうがよいでしょう。

・加湿器内タンクの水の管理をきちんとしないと、雑菌が繁殖し、室内がかび臭くなったり、雑菌をばらまく恐れがある

・空気清浄機に加湿機能をつけると 本体重量が重くなり、価格も高くなる

空気清浄機の主なメーカー

さて、以上の知識があれば、空気清浄機を、より自信をもってえらぶことができるようになります。空気清浄機を製造販売している主なメーカーは以下の通りです。

シャープ ファン式のシンプルな構造で入手しやすい価格帯で複数機種を展開しています。「プラズマクラスター」と呼ばれるイオン発生機で除菌機能を提供しています。
パナソニック 気流を3方向に分散させて室内の空気を循環させ、重い花粉をしっかり吸い込む「3Dフリー花粉撃退気流」をウリにしている。除菌には、イオン発生機である「ナノイー」を利用
ダイキン TAFUフィルターとよばれる静電HEPAフィルターを採用。プラズマ放電で有害物質を分解するダイキン独自技術「ストリーマ」を装備。
ダイソン 夏場は涼しい風を送るファンと空気清浄機能がセットになったPurifierを提供。
ブルーエア HEPASilentテクノロジー」と呼ばれる独自技術で0.1μmまでの有害物質を帯電吸着除去する高性能をウリにしている

その他にも、バルミューダ、アイリスオーヤマ、エアドッグ、シャオミなどからも販売されていますが、この記事では、「集塵」「脱臭」「除菌」という本質的な「空気清浄能力」において技術的な特徴のあり、かつ情報を開示しているメーカーのみ紹介していきます。

各社の具体的な機種の比較について以下の記事で紹介します。

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