投資できる人は住宅ローンは繰り上げ返済しないほうがよい。シミュレーションしてみた!

節約術

住宅ローンのような多額の借金を抱えていると、「早く返して楽になりたい」という意識が強く働きます。そして「手持ちの現金に余裕があるのであれば、繰り上げ返済を優先しましょう」と説くフィナンシャルプランナーも数多くいます。本当にそれが最善なのでしょうか?

ここでは、手持ちの現金に余裕があり、この先の収入も安定している人が、
①繰り上げ返済した場合
②繰り上げ返済ではなく、投資をした場合
それぞれで、将来の金融資産はどうなるのか?
ある極端なケースでシミュレーションしてみました。


私は、多額の住宅ローンを抱えています。
その一方で、住宅ローンの大半を返済できるくらいの金融資産も持っています。
「だったらなぜ繰り上げ返済しないの?」と思う方もいるかもしれません。

私が繰り上げ返済しない理由は、

「住宅ローンが低金利の場合、一括返済するより投資で利益を増やしたほうが断然お得」

と考えているからです。

私の個人的な主義主張ではないことを、数字で証明してみたいと思います。


まずシミュレーションにあたって以下のような状況を仮定します。

1.住宅ローン負債が 3,000万円残っている。
2.10年間の固定金利で1%の住宅ローンを組んでいる。
3.金融資産を3,000万円持っている。
4.住宅ローンを返し続けるだけの収入が今後もある。
5.今後10年間の年平均投資リターンは 3%と想定される。

一括返済してしまえば、負債はゼロでスッキリします。
でも本当にそれがお得なのでしょうか?
以下の2パターンでシミュレーションしてみます。

パターン1 パターン2
住宅ローンは一括返済し、負債をいったんゼロにする。 一括返済せずに、住宅ローンを 10年間固定金利 1%で返済しつづける。
残りの10年間は、住宅ローン返済に充てる予定だった金額を積立てながら年利3%で運用する。 金融資産は投資に回し、年率3%で増やし続ける。

どちらのパターンでも手持ちの金融資産には複利効果が働きます。

以下のステップで どちらが得か計算してみましょう。

住宅ローンの返済額は?
パターン1)一括繰り上げ返済した場合
パターン2)繰り上げ返済せず投資し続けた場合

結論(どっちがお得?)


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住宅ローンの返済額は?

まずはじめに住宅ローンの毎月の支払い額から計算してみましょう。

Excelの PMT関数を使えば、おおよその金額がイッパツでわかります。

この関数、住宅ローンのシミュレーションするときには必須の関数ですが、たまにしか使わないのでいつも使い方をわすれてしまい、ネットで検索して調べています。

毎月の返済額 =PMT(利率 , 期間 , 現在価値 , 将来価値 , 支払期日)

利率
住宅ローンの金利です。ここで注意しなければならないのが、毎月の返済額を出したいので、金利も年ではなく月単位に直します。具体的には、(年金利)/  12(ヶ月)で計算します。
期間
これも住宅ローンの期間ですが、支払い回数なので、毎月返済するのであれば、期間(年数)x 12ヶ月で計算します。
現在価値
現在の負債の額です。今回のケースでは、-3,000万円です。
将来価値
将来の負債の額です。10年後に返済完了を予定していますので 0(ゼロ)になります。

今回のケースでは、

毎月の返済額は、PMT(0.01/12 , 10*12 , -30,000,000, 0) = 262,812円 となりました。

一括繰り上げ返済した場合

住宅ローンは一括返済してしまいますので、金融資産はいったんゼロになります。

そして、残りの10年間は、住宅ローンの返済に充てる予定だった資金(262,812円、年3,153,748円)を積立投資にまわせます。

前の年の資産に対して年率3%で利息がつくと仮定すると、10年後は以下のようになります。

金融資産残高
1年後
3,153,748
2年後
6,402,109
3年後
9,747,921
4年後
13,194,107
5年後
16,743,678
6年後
20,399,737
7年後
24,165,478
8年後
28,044,190
9年後
32,039,264
10年後
36,154,191

10年後には、36,154,191円の金融資産を築けることになります。

繰り上げ返済せず、投資した場合

一括返済せずに、住宅ローンを 10年間固定金利 1%で返済しつづけます。

3,000万円の金融資産は投資に回し、年率3%で増やせる場合、10年間の金融資産の総額は以下のようになります。

金融資産総額
スタート時
30,000,000
1年後
30,900,000
2年後
31,827,000
3年後
32,781,810
4年後
33,765,264
5年後
34,778,222
6年後
35,821,569
7年後
36,896,216
8年後
38,003,102
9年後
39,143,196
10年後
40,317,491

つまり、10年後には、住宅ローンを返済し終わったあと、40,317,491円の金融資産 が残ることになります。

参考までに、3,000万円の住宅ローンを 10年間固定金利 1%で返済しつづける場合、残額の推移は以下のようになります。(10年後に少し端数が残るのは、毎月の金利が正確には年金利の1/12ではないためです。)

年返済額
うち利息金額
(前年残債の1%)
借入れ金充当分
借り入れ残額
30,000,000
1年後
3,153,748
300,000
2,853,748
27,146,252
2年後
3,153,748
271,463
2,882,286
24,263,966
3年後
3,153,748
242,640
2,911,109
21,352,857
4年後
3,153,748
213,529
2,940,220
18,412,637
5年後
3,153,748
184,126
2,969,622
15,443,015
6年後
3,153,748
154,430
2,999,318
12,443,697
7年後
3,153,748
124,437
3,029,311
9,414,386
8年後
3,153,748
94,144
3,059,605
6,354,781
9年後
3,153,748
63,548
3,090,201
3,264,581
10年後
3,153,748
32,646
3,121,103
143,478

結論

さて、ここまででると比較ができます。

一括返済しないで投資した場合
40,317,491円
一括返済した後、積立投資する場合
36,154,191円
差額
4,163,300円

一括返済しないで投資したほうが、400万円以上お得になりました。

これがもし、年利5%で投資運用できた場合は、その差がさらに開きます。

一括返済しないで投資した場合
48,866,839円
一括返済した後、積立投資する場合
39,667,508円
差額
9,199,331円

一括返済しないで投資したほうが、900万円以上お得になりました。

もちろんこれは、あくまでシミュレーションで、この通りにうまくいくとは限りません。

もし最初の金融資産 3,000万円を現金で持っていた場合、いきなりVTIやVOOなどのETFに全額投資して年3%の利益を上げるのは難しいかもしれません。

最初の数年は、一部だけを投資にまわして、IPO投資、小型株投資、米国成長株投資、FXなどと組み合わせながら利益を上げていくのが現実的でしょう。現金資産が多いときにこそ、有利になる投資方法がいくつあります。

また万が一、毎年順調に増やせなくても、損にはならないでしょう。

低金利の環境をうまく利用しながら、10年間にわたって投資で増やせるチャンスに賭けるほうがよいと思います。

節約術
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