一般的にFXトレードを行う場合には、Windowsパソコンが良いと言われています。それは、トレードツールやパソコンの拡張性の観点で、WindowsはMacより優れいている点が多いためです。それではMacユーザーはFXトレードができないのでしょうか?長年にわたる試行錯誤の末、整えることができたMacでのFXトレード環境と今後について説明します。
Macユーザーが苦労する点(1)取引ツール
MacでFXトレードを行いたいユーザーが最初に直面するのが取引ツールのMac対応です。
以下は私が契約したことがあるFX会社の一部です。ご覧いただくとわかる通り、ほとんどの会社がWindows版のインストール版クライアントソフトは提供しています。しかしMacについてはWebブラウザ版の提供にとどまり、インストール版のソフトを提供している会社はほとんどありません。Webブラウザ版は、一度に開けるチャートの数に制限がある場合が多いため、本格的なトレードをするには不十分かもしれません。
FX会社 | Windows ネイティブ対応 | Mac ネイティブ対応 |
JFX | ⭕️インストール型.NET版 | ⭕️Mac 専用アプリ(インストール型) |
SBI FXトレード | ⭕️インストール型リッチクライアント(Windows専用) | X)Webブラウザ版 |
FXTF | ⭕️MT4 インストール版 | X)Webブラウザ版 |
OANDA | Webブラウザ版(fxTrade)、⭕️MT4、MT5(インストール版) | X)Webブラウザ版 |
DMM FX | Webアプリ(DMM FX PLUS、DMM FX STANDARD) | Webアプリ(DMM FX PLUS、DMM FX STANDARD) |
FX会社が独自に提供しているツールだけでなく、一番苦労するのはMT4やMT5への対応です。
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もっとも支持されているトレードツールとしてMT4やMT5を使いたいケースは多いと思いますが、残念ながらMacOSにインストールできるMetaTraderを提供している会社は日本にはほぼありません。
注)MT5については、MetaTrader5の公式ページから入手しインストールした”macOS向けダウンロード版”で口座に接続できる日本のFX会社が2つあります。OANDA証券と外為ファイネストです。ただこの2つの口座はスイング以上の中長期トレードをするなら問題ありませんが、スキャルピングをするためのデータを参照するには不適切です。スプレッドが広かったり、レートの表示にタイムラグがあるような気がするからです。
以下のデータはある日時のUSDJPYのレート比較です。
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外為ファイネストのほうは、スプレッドが異常に広い時間帯があり、スキャルピングには不向きであること、OANDAのほうは、他社に比べてレート表示にタイムラグがあるような気がして、同じくスキャルピングには使いづらいです。
BigBossやXMTradingなど一部の海外のFX会社には、Mac版のMT4やMT5を提供している場合がありますが、信託保全の観点からあまりおすすめはできません。
別の方法として、有料版の仮想化ソフト ParallelsDesktopを使う手もありますが、サブスクリプションで年間1万円程度かかります。Macの動作も重くなりますし、MT4のような簡単なソフトを動かすためだけに、MacOS上に仮想化ソフトをのせて、その上にWindowsOSをインストールというもかなり重い負荷になります。
そうしたMT4やMT5をMac上で使いたい人にとっての救世主となるのが、「Wine」というオープンソースソフトウェアです。
Wine(Wine Is Not an Emulator)は、LinuxやmacOSなどのUNIX系OS上で、Windows向けに作られたアプリケーションやゲームを直接動かすためのオープンソースプロジェクトです。
名前の通り「エミュレーター」ではなく、WindowsのAPIやシステムコールを再実装する「互換レイヤー」として動作します。つまり、Windowsそのものを仮想マシンとして起動するのではなく、アプリケーションが呼び出すWindows用関数を、macOSやLinuxのネイティブな関数に変換して実行します。
セットアップは上級者向けですが、このソフトウェアを使えば、Windows向けに作成されたMT4やMT5のソフトウェアをMac上で稼働させることができます。
このあたりのかなり面倒な作業については、こちらの記事で解説しています。
JFXのWindows版 MT4をMacで利用する|Wineのインストールとセットアップ方法
Macユーザーが苦労する点(2)ハードウェア拡張
MacユーザーがFXトレードをする上で苦労する2つ目の点は、ハードウェアの拡張です。具体的には、モニターを3台、4台、・・・6台と増やしていきたいと思ったときに、仕様やコストで制約が多いのです。
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Windowsのタワー型デスクトップパソコンであれば、拡張スロットに複数ディスプレイポートをもったグラフィックボードを差し込めば、比較的手軽に接続できるモニターの台数を増やすことができます。また、FXトレード用にカスタマイズした機種を販売している会社もあります。
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外為パソコンの外貨投資専用トレード・ワークステーション。モニター6枚とモニターアーム付きで448,000円〜 |
しかし、Macパソコンの場合は、購入後に拡張ということはできません。しかも、1モニター接続あたりのハードウェア単価がべらぼうに高いのです。もし仮にMacのデスクトップパソコン1台で、モニターを6画面表示させようとしたら、最低でも Mac Studio M3 Ultraを購入しなければならず、本体だけで 668,800円もします。(最大 外部モニター8台まで接続可能)
しかし、この状況も 2024年11月に発売されたMac mini M4の登場によって大きく変わりました。Mac mini M4は、個人的には史上最強の小型デスクトップパソコンではないかと思っています。
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Mac mini M4 大きさはわずか12.7cm x 12.7cm x 5.0cmの手のひらサイズ。価格は 94,800円〜 |
参考記事)Mac mini M4をついに購入。これは史上最強コスパのデスクトップマシーンではないか?
これまでのMac miniでは、一番安い機種では外付けディスプレイの数が2台までしかサポートされていませんでした。しかし、 Mac mini M4では、一番安い機種(94,800円〜)でも 外付けディスプレイの数が3台までサポートされています。
しかも、MacOSの標準機能である「ユニバーサルコントロール」を使えば、1組のキーボードとマウスで、2台のMacの間を自由に行き来して、シームレスにアプリの操作が可能です。
Macで6画面モニター環境を作るベストな方法は?Windowsパソコンに負けないコスパを実現
この仕組みを使えば、2台のMac mini M4をつかって、6台のディスプレイを備えたトレード環境を構築することが可能なのです。
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1台目のMac mini M4に、下段 3つのモニターを接続し、2台目のMac mini M4には、上段3つのモニターを接続する。ユニバーサルコントロール機能を使えば、上段・下段のモニター間でマウスポインターは自由に移動できるため、キーボートとマウスは1組でOK。 |
MacユーザーのFXトレード:今後
さて、以上のような工夫によって、トレードツール、モニター環境ともに、Windowsユーザーに負けないFXトレード環境を構築することができました。しかし、 MT4やMT5をMac上で動かすために利用してきたオープンソース「Wine」が今後1年以内に利用できなくなる可能性があります。
Appleは「macOS Tahoe」がIntel内蔵Macをサポートする最後のOSになると発表、Rosetta 2も1年後に終了 (出典: Gigazine)
上記記事によると、MacのアーキテクチャをIntelのx86-64からAppleシリコンに移行するための変換レイヤーであるRosetta 2を2026年にリリース予定のmacOS 27までサポートし、その後は終了する予定であるとのことです。このRosetta 2が提供されなくなると、WineのソフトウェアがMac上で動かせなくなり、したがってMT4やMT5が動かせなくなります。
1年以内を目安に、MetaTraderを動かせるWindowsOS環境を用意しなければなりません。2024年にまとめた以下の記事を参考に、最新の選択肢を挙げてみます。
MacユーザーがWindowsソフトを動かしたいときの対処法
選択肢 | 費用 | 注意点 |
Wine | 0円 | 2026年以降はサポートされない可能性 |
CrossOver Mac | 買い切り $74 (1万円程度) | 2026年以降はサポートされない可能性 |
ParallelsDesktop | 7,000円程度/年 | |
Windowsパソコンを購入 | ミニPCの中古品であれば2万円程度 | Macからリモート接続するにはWindows 11 Proが必要 |
レンタルサーバーを契約する | 月額1,000円前後 | 最低契約期間 3ヶ月〜 |
いずれの場合でも年平均で 1万円前後の維持費用はかかりそうです。しかも、どの方法を使っても、Wine上にインストールしたMT4のときのように、複数のMT4を同時に立ち上げることはできません。
全く別の観点で、TradingViewに乗り換えてしまうという選択肢もあります。ただTradingViewの場合には、1枚のウィンドウで開けるチャートの数がサブスク料金に比例するというデメリットがあり、MT5に比べると使い勝手に制約があるのが難点です。
どの方法がよいかは、期限がくるまでゆっくり考えたいと思います。