FX会社の中には独自のインジケーターを提供しているところがあります。
これらのインジケーターは、MT4(MetaTrader 4)での使用を前提としており、特定のFX会社が提供するMT4でしか動作しないように設計されていることもあります。
しかし、MT4自体がWindows版しか提供されていないケースが多く、MacユーザーはそうしたFX会社のMT4をそもそも使用できず、結果としてインジケーターも使えないという状況に陥りがちです。
本記事では、MacユーザーがWindowsアプリを利用する際の選択肢をまとめたうえで、JFXが提供しているMT4を例に、macOS(15.4.1 / Sequoia)上でJFXのWindows版MT4を動作させる方法について解説します。
【おさらい】MacユーザーがWindowsアプリを利用する方法
以下にMacユーザーがWindowsアプリを利用したいと考えたときの選択肢を一通り示します。
Windowsパソコンを購入する
この方法は最も手っ取り早い手段です。小型のデスクトップ型Windowsパソコンであれば、安いものは2〜3万円から入手可能です。
例えば、MINISFORUMは、非常にコスパの良いWindowsのミニPCを提供していますが、以下の機種では メモリ16GB, ディスク容量 256GB, Windows Pro OSがインストールされた状態で、3万円以下で購入できます。
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UN100P ミニPC
メモリ16GB ディスク 256GB Windows 11 Pro |
ただし、Macに慣れているユーザーが、特定のアプリを使用するためだけにWindowsパソコンを購入して併用するのは現実的ではないかもしれません。特定のWindowsアプリを利用するときだけ、パソコンをつなぎ替えるのも面倒でしょう。
仮想化ソフトを使う
Mac上で操作を完結させたい場合の有力な選択肢は「仮想化ソフト」の利用です。
たとえば「Parallels Desktop」のような仮想化ソフトを使えば、macOS上に仮想的なWindows環境を構築できます。Parallels Desktopの上にWindows OSをインストールし、さらにその上にWindowsアプリ(例:MT4)をインストールすれば、macOS上でWindowsアプリを利用可能です。
メリット:
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実質的にどのWindowsアプリも動作する
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動作の安定性が高い
デメリット:
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Parallels Desktopの購入費用とWindows OSのライセンス費用がかかる
Parallels Desktop for Macの費用は 7,475円/年です。Windows 11のOSライセンスは 15,000円前後です(買い切り)。初年度に合計で2万円以上の費用がかかります。Parallels Desktopの方は、サブスクなので2年目以降もライセンス料がかかります。 -
大容量のディスクスペースが必要
Paralllels Desktop自体の必要ディスク容量は600MBですが、それ以外にWindows OSをインストールするために最低でも16GB以上が必要です。 -
アプリの動作が重くなることがある
MacOSの上で Parallels Desktopを動かし、その更に上でWindows 11を動かすため、MacOSにかかる負荷は当然高くなります。
クラウド上のWindowsを使う(VPS)
別の方法として、VPS(Virtual Private Server)を使う方法もあります。
VPSでは、プロバイダーがWindows OSをインストールしたクラウド環境を提供してくれるため、そこにMT4などのWindowsアプリをインストールして利用します。
例:
メリット:
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物理的なマシンが不要
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クラウド上で動いているWindowsアプリに接続するだけなので、Macパソコン本体に負荷がかからない
デメリット:
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VPSの月額料金がかかる
VPSの利用は基本的にはサブスク契約が必要です。費用は、プロバイダーが用意する仮想マシンのメモリ容量、ディスク容量によって変わりますが、例えば メモリ1GB, ディスク容量 100GBの場合で、月額1,485円〜となっています。(さくらのVPS for Windows Serverの場合)
CrossOverを使う
CrossOverは、CodeWeavers社が開発したソフトウェアで、WindowsのAPIを再現することにより、WindowsアプリをMacやLinux上で動作させられるソフトウェアです。
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CrossOverは、このあとに説明するオープンソース”Wine”を商用向けにパッケージ化して使いやすくしたものです。仮想化ソフトと異なり、WindowsOSをインストールするわけではないので、動作が軽く、Windows OSのライセンス費用がかからないというメリットがあります。
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メリット:
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仮想マシンを使わないため軽快に動作
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必要なディスク容量も少ない
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Windows OSのライセンスが不要
一方でデメリットもあります。CrossOver内で用意されているWindows APIは、Windows OSが持っているすべての機能を再現できているわけではありません。もし動かしたいWindowsアプリが、CrossOver内で用意されていないWindows OSの機能を必要としている場合、そのアプリは CrossOver上では”動かない”ことになります。
デメリット:
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CrossOverのライセンス費用がかかる(買い切りで約75ドル)
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すべてのWindowsアプリが動作するわけではない
Wineを使う
WineはCrossOverのベースとなっているオープンソースソフトウェアです。
オープンソースなので、無料で利用できます。
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WindowsアプリをMacOS上で動かすための仕組みつくりは、1993年、まだWindows OSがWindows 3.1やWindows NTだった時代から、オープンソースコミュニティで長年に渡って続けられてきました。(出典:About Wine)
この活動は、2025年の現在、Apple Siliconチップが登場し、macOS Sequoiaが登場した現在でも続けられています。
この方法は無料であるため、とても良いのですが、唯一の難点はインストールとセットアップが非常に難しいことです。私が “Wine”の存在をはじめて知った2022年には、簡単な GUIのインストーラーがあったのでまだ対応が可能だったのですが、現在はそれらはなくなり、難解な英語のマニュアルを読み解きながら作業をする必要があります。
参考記事)macOS 上でMT5を2つ同時に動かす。WineskinServerの活用 (2023年)
メリット:
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完全無料で利用可能
デメリット:
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一部のWindowsアプリは動作しないことがある
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セットアップが難しく、ある程度のIT知識が必要
MT4は比較的シンプルな構造のWindowsアプリのため、Wineでの動作実績もあります。無料で運用できる点は非常に魅力的です。
次回の記事では、このインストールとセットアップが難しいWineを使って、Windows版のMT4をMacで動作させる方法について詳しく解説します。
JFXのWindows版MT4をMac上で利用する|Wineのインストールとセットアップ方法