JFXのWindows用MT4をMacパソコン上で利用するためにWineのオープンソースを利用します。インストール手順が複雑なため、順を追って説明します。
インストール手順は大きくわけて5ステップです。(XQuartz, Rosetta 2, Homebrew, Wine, JFX MT4)
もし途中、どこかのステップでつまずいた場合には、エラーメッセージをChatGPTにいれて聞いてみるとよいでしょう。自分で苦労して英語のマニュアルを読み解かなくても、かなり的確に解決策を教えてくれます。
- XQuartzのインストール
- Rosetta 2のインストール
- Homebrewのインストール
- Wineのインストール
- JFX MT4のインストール
- インストールされたファイルはどこにある?
- アプリの設定
- MT4を2つ起動できる?
- インジケーターはどこに入れる?
- このやり方はいつまで使える?
XQuartzのインストール
XQuartz(エックスクォーツ)は、macOS上でX Window System(通称X11)を動かすためのソフトウェアパッケージです。X11は、Unix系OSで広く使われているGUI(グラフィカルユーザーインターフェース)システムで、今回のWineでも利用されています。
現在のmacOSにはXQuartzはデフォルトでインストールされていないため、以下からダウンロードしてインストールしておく必要があります。
公式サイト(https://www.xquartz.org/)
インストール後には、ログアウトがかかりますので、再起動されて困るアプリを起動している場合は注意してください。
Rosetta 2のインストール
次に “Wine”をインストールするために、Intelプロセッサー向けに開発されたソフトウェアを管理するパッケージ管理ツール「Rosetta 2」をインストールします。
Macパソコンは、2020年以前はIntelが作成したプロセッサーを利用してきました。しかし、2020年からAppleは、自前のプロセッサーを開発するようになりました。そのため、Appleシリコン M1の登場後、macOSはIntelプロセッサー(x86_64)とAppleシリコンプロセッサー(ARMアーキテクチャー)の両方に対応しています。しかし、macOSはどちらのプロセッサーに対応していても、これまでIntel Mac用に作られたアプリは、Appleシリコン上では動きません。
そこで用意されたのが、「Rosetta 2」と呼ばれる互換レイヤーです。Rosetta 2によって、従来のIntel Mac用に作られたアプリでもAppleシリコンのMacパソコンでも使えるようになります。
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参考)MacにRosettaをインストールする必要がある場合(出典: Apple)
Wineプロジェクトのソフトウェアは、これまで Intel Mac用に開発されてきています。
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そのため”Wine”をAppleシリコンのMacで動かすには、「Rosetta 2」をまずインストールします。
「ターミナル」を開き、以下の2つのコマンドを実行します。
softwareupdate –install-rosetta –agree-to-license
Homebrewのインストール
次にHomebrewをインストールします。Homebrew(ホームブルー)は、macOS や Linux 用のパッケージマネージャーです。ターミナルでコマンドを打つだけでソフトウェアを簡単にインストール・更新・削除できます。
arch -x86_64 /bin/bash -c “$(curl -fsSL https://raw.githubusercontent.com/Homebrew/install/HEAD/install.sh)”
インストールが完了したら、Next steps:の指示に従い、以下の3つのコマンドを実行します。
注:(ユーザー名)は、Macintosh HD/ユーザ/ 以下にあるログインのユーザ名です
echo >> /Users/(ユーザー名)/.zprofile
echo ‘eval “$(/usr/local/bin/brew shellenv)”‘ >> /Users/(ユーザー名)/.zprofile
eval “$(/usr/local/bin/brew shellenv)”
Wineのインストール
ここまできてようやくWineのインストールが可能となります。
which brewコマンドでbrewのディレクトリーを確認します。そしてそのパスを指定して以下のコマンドを実行します。赤字部分が which brewコマンドで確認できたbrewへのパスです。
arch -x86_64 /usr/local/bin/brew tap gcenx/wine |
ターミナル画面はしばらく固まっているように見えますが、進行しています。
arch -x86_64 /usr/local/bin/brew install –cask wine-crossover |
こちらが実際のダウンロードで、インストール完了まで多少時間がかかります。
すでにインストールされている場合、Errorがでます。
Error: It seems there is already an App at ‘/Applications/Wine Crossover.app’.
これでWine Crossoverがインストールされています。
JFX Windows版MT4のインストール
さて、いよいよ JFXのWindows版MT4のインストールです。以下のサイトから、インストーラーのjfx4setup.exeをダウンロードしておきます。
Wineが正常にインストールされていると、通常 macOSでは何もアイコンがついていなかった”.exe”ファイルに、”Wine”のアイコンが付くようになります。
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このファイルをダブルクリックするとすぐにインストールを実行できそうですが、以下のエラーメッセージが出ることがあります。
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これは、macOSのセキュリティ強化の影響で、検証されていないダウンロード済アプリはすぐに開けないようになっているからです。
この解除には、「設定」→「一般」→「プライバシーとセキュリティ」で、「このまま開く」を押すと実行できるようになります。
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以下のようなメッセージがでてWineのセットアップが完了し、Windowsアプリの”.exe”ファイルが実行できるようになります。
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jfx4setup.exeがおいてあるフォルダに移動して、ターミナルで以下のコマンドを実行します。
wine jfx4setup.exe |
以下のようなインストーラーが起動し、MT4がインストールされます。
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インストールされたファイルはどこにある?
MT4のアプリ自体は、「ユーザ」フォルダの下に入っています。ただし、隠しフォルダになっているので、そのままでは見られません。
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Command + Shift + .(ドット) を同時に押すと、隠されていた “.wine” フォルダが現れます。
/.wine/drive_c/Proguram Files(x86)/JFX MT4/terminal.exe が MT4の実行ファイルです。
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ただ、このままでは使いづらいので、アプリアイコンに直してすぐに起動できるようにします。
アプリの設定
Macの他のアプリと同様にアイコンをクリックしてJFXのMT4を起動できるようにしたいときは、ユーティリティにある「Automator」を利用します。
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「ファイル」–>「新規」をクリックし、「書類の種類」で「アプリケーション」を選択します。
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ライブラリにある選択肢の中から「シェルスクリプトを実行」を選択します。
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以下のコマンドを記入して、wineの実行環境から、MT4 ターミナルのexeファイルを呼び出します。
/usr/local/bin/wine “$HOME/.wine/drive_c/Program Files (x86)/JFX MT4/terminal.exe”
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Animotorで、「ファイル」–>「保存」で 「アプリケーション」フォルダに保存すれば出来上がりです。ファイルは、”.app” 形式で保存されます。
アプリの一覧を出したときに、”wine”のステーブル環境のアイコンとともに、”JFX-MT4″のアイコンも表示されます。今後は、このアイコンをクリックするだけでMT4を起動できます。
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アイコンの絵を変えたい場合には、「アプリケーション」フォルダから作成した”JFX MT4″のアプリを右クリックし、「情報を見る」を選び、左上の小さいアイコンの上で画像をペーストすれば変えられます。
MT4を2つ起動できる?
1台のWindows パソコンにはJFX MT4は通常1つしかインストールできません。しかし、Wineの仕組みを使えば、1台のMac上で、複数のWindows版JFX MT4を同時に起動できます。そのやり方は以下の通りです。
まずターミナルで以下の2行のコマンドを入力し、/.wine2という隠しフォルダーを作成し、仮想Windowsを設置します。この/.wine2というフォルダの下に、先ほどの/.wine と同じように /drive_cなどが作成され、新しく別のMT4をインストールする環境が用意されます。
export WINEPREFIX=~/.wine2 winecfg |
途中、以下のようなWINEの設定画面がでることがありますが、必要なければ特になにも変更せず、そのままOKボタンを押します。
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それぞれのMT4ターミナルの実行ファイルの場所は以下になります。
“$HOME/.wine/drive_c/Program Files (x86)/JFX MT4/terminal.exe”
“$HOME/.wine2/drive_c/Program Files (x86)/JFX MT4/terminal.exe”
2つ目のMT4もAutomatorでアプリとして設定すれば、別々の設定を行ったJFXのMT4を同時に起動することができるようになります。
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1点だけ注意点があります。1つの仮想Windows OSを増やすたびにディスク容量を 500 MB程度必要とします。簡単にできるからといって、大量に仮想Windowsをコピーしていき、ディスク容量不足にならないように注意してください。
インジケーターはどこに入れる?
MT4のセットアップが完了し、無事起動できるようになりました。このあと、他所から入手したインジケーターをインストールしたい場合があります。このときに、先のterminal.exeが入っていた同じフォルダーの
“$HOME/.wine/drive_c/Program Files (x86)/JFX MT4/MQL4/indicators/ 以下にインジケーターの”.ex4″ファイルを入れても認識しないことがあります。(注:$HOMEは、Macintosh HD/ユーザ/(ユーザー名)以下)
その場合は、別のフォルダーが、インジケーターの保存場所として認識されています。例えば以下のような感じです。
“$HOME/.wine/drive_c/users/(ユーザ名)/AppData/Roaming/MetaQuotes/Terminal/(長い数字の羅列)/MQL4/Indicators/
この場所を簡単に探す方法は、MT4を起動したあと、「ファイル」–>「データフォルダを開く(D)」をクリックし、フォルダの保存場所を表示したあと、フォルダ階層を上位にたどっていくことで見つけることができます。
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チャートの組表示」や「定型チャート」などの設定ファイルも、このMQL4フォルダに入っています。
このやり方はいつまで使える?
ここまで苦労してインストールしたのに、大変残念なお知らせがあります。
2025/6/10に開催されたWWDC25の基調講演で、今年秋に発表される macOS TahoeがIntel Macをサポートする最後のOSとなり、Rosetta 2の提供が終わるとのことです。
Appleは「macOS Tahoe」がIntel内蔵Macをサポートする最後のOSになると発表、Rosetta 2も1年後に終了 (出典: Gigazine)
そうなると、Rosetta 2を前提としている Wineも利用できなくなる可能性があります。その場合は、有償のCrossoverやParallels Desktopへの移行が必要になるかもしれません。
今後のAppleの動向に注意が必要です。