FXトレードにAIを取り入れて勝率を上げられるか?まずは、FXトレードにおけるAI活用とは具体的にどのようなものなのかについて理解を深める必要があります。またチャート分析に必要となるデータの入手方法についても整理してみました。
チャート分析に適したAIモデルは?
2022年夏ごろからのMidJourneyやStable Diffusionによる画像生成AIブール、2022年年末からのChatGPTによる対話型AIブームをきっかけに、プライベートでもビジネスでもAIの活用が飛躍的に広がりました。
AIの活用では、データの形式によって適切なAIモデルが異なってきます。
扱うデータ形式 | 適切なモデル | AIモデルの例 |
数値データ | 機械学習、ディープラーニング | (自作?) |
テキスト | 自然言語処理モデル | ChatGPT, Gemini,Microsoft Copilot |
画像 | 画像認識モデル | Stable Diffusion, MidJourney |
これまで扱うことが難しかったテキストや画像の扱い(認識と加工・生成)が可能になったことで昨今のAIブームが起きているわけですが、チャートデータの分析、トレード戦略立案では数値データを扱うので、昔から利用されてきた機械学習やディープラーニングのAIモデルを使えば十分であると思います。むしろ最初の段階では、AIモデルの活用の前、古典的なデータサイエンスで十分かもしれません。
AI活用とデータサイエンスの違い
AIを活用したトレード戦略立案の前に、まずは過去のチャートデータの分析が必要です。このあたりはデータサイエンスの領域になるわけですが、既存AI活用とデータサイエンスは似ているようで異なるのでここで整理しておきます。
観点 | データサイエンス | 既存AI活用 |
目的 | データを解析し、自分で仮説を立て検証して戦略を磨く | AIに分析や予測を任せて、効率的に売買判断を支援する |
手法 | 統計分析・機械学習(回帰、クラスタリング、時系列解析など)を使ってモデルを構築 | 既存のAIモデル(例:価格予測AI、ChatGPTによるニュース要約)を利用 |
データの扱い | ローデータを前処理し、指標作成・特徴量選択・モデル比較を行う | AIに入力(チャート画像・価格データ・ニュース記事など)すれば自動で特徴抽出・予測 |
必要スキル | Python/R、統計学、機械学習理論などの専門スキル | AIツールを使いこなすリテラシー(高度なプログラミングは不要) |
分析スタイル | 「ホワイトボックス」型(手法や結果を自分で理解・説明可能) | 「ブラックボックス」型(AIが結果を出すが理由は不透明なことが多い) |
戦略立案 | データに基づき自分で戦略を設計(例:「移動平均とボラティリティから逆張り戦略を構築」) | AIの出力を参考にする(例:「今後1時間でドル円上昇確率70%」) |
メリット | ・戦略の根拠を説明できる | ・迅速な意思決定 |
・オリジナル戦略を作れる | ・初心者でも使いやすい | |
・特定市場にカスタマイズしやすい | ・大量の非構造データ(ニュース・SNS)も処理可能 | |
デメリット | ・時間と労力がかかる | ・AIの判断根拠が不明確 |
・専門知識が必要 | ・過学習や環境変化に弱い | |
・データ不足だと精度が出にくい | ・ブラックスワン的事象に対応しにくい |
難しい用語がいろいろと並んでいますが、簡単に説明すると、「データサイエンス」は、自分でデータを解析し、戦略を立てて結果を検証し改善を重ね、「既存AI活用」は、データ分析や戦略立案をAIモデルに任せてしまう点が異なります。
ただ、既存AIモデルは、判断や提案の根拠が明確でない(ブラックボックス)ため、大事なお金を運用する根拠として全面的に信頼するのは難しい状況です。一方で、データサイエンティストでもない我々が、専門家に対抗してすぐにデータ分析の専門知識やプログラミングスキルを取得するのも難しいでしょう。
そこで考えたのが、データサイエンスの基礎やプログラミングについては、ChatGPTのような既存AIモデルに支援してもらい、データ分析やトレード戦略立案は、あくまで自分で行うというハイブリッド戦略です。
このやり方も決して楽な方法ではありませんが、他人と差別化をしてトレードで勝ち続けるには、このくらいの努力は必要でしょう。
チャートデータの種類と入手方法
データサイエンスで一番大事なのは、信頼がおけるデータの入手です。FXトレードにおいては、注目している通貨ペアのチャートデータの入手が最優先ですが、債券や株式、暗号資産やVIX指数など、為替に影響を及ぼす他の要因についてもデータを取得して、相関分析したいという人もいることでしょう。
個人がチャートデータを入手するのに一番手軽なのは、MetaTraderでFX会社が提供するデータを取得する方法です。それ以外のデータを入手するにはTradingViewの有料プランを契約する必要があります。主な違いは以下の通りです。
比較項目 | MetaTrader(FX会社経由) | TradingView |
データ種類 | 通貨ペア(FX会社によっては、その他の金融資産のデータも提供) | 株式、先物、指数、FX、暗号通貨、ETF、債券、オプション、CFDなどあらゆる金融資産を網羅 |
履歴データの取得可能期間 | FX会社の方針に依存 | 銘柄によって年数は異なるが、Premium以上の有料プラン以上では、最も古いデータまで遡れる模様 |
TradingViewの有料プランは、あらゆる金融資産について、遡れるだけ古い年月のデータまで取得できるのに対して、FX会社がMetaTraderで提供するデータの銘柄や取得可能期間は、FX会社の方針に依存します。
例えば、同じFX会社でも、OANDA証券とJFXで比較すると以下のような違いがあります。
項目 | OANDA証券 | JFX |
対応資産クラス | 通貨ペア/指数CFD/商品CFD/株式CFD/ETF CFD/暗号通貨CFD | 通貨ペアのみ(約40種類) |
プラットフォーム | MT5(Desktop/Web/Mobile) | MT4、Matrix Trader、TradingView |
付帯情報 | 板情報、経済カレンダー、AutoChartist、Order Book Indicatorなど | なし |
したがって、自分が比較分析した銘柄に応じて、MetaTraderだけで十分かどうか、FX会社を変更しなければならないか、お金を払ってTradingViewを使う必要があるか、決めていくことになるでしょう。
まずは、自分が契約しているFX会社が、MetaTrader(MT4 もしくはMT5)でチャートデータを提供しているのであれば、関心がある銘柄のデータを取得し、分析するところからはじめるとよいでしょう。
次の記事では、MetaTraderを使ったチャートデータの入手と、簡単なプログラミングでのデータ分析について説明します。