長年負け続けてきた私のFXトレードですが、最近ようやく「負けにくくなってきた」実感を持てるようになりました。これは単純に言えば「やってはいけない時にトレードをしない」ことを徹底できるようになったからです。では逆に「勝ちやすい時」はどんなときなのでしょうか? ChatGPTをはじめとして、AI機能が個人でも簡単に利用可能になったいま、「AIを活用したFXトレード」が実現できるのか、勝率を上げられるのかを探ってみました。
トレードで負けにくくなった理由とは?
FXはゼロサムゲーム。無作為に行えば、勝ち負けの比率は同じです。また、誰かが勝てば、必ず誰かが負けます。特に個人投資家は情報力や資金力で不利とされ、統計的に見ても継続的に勝ち続けられる人はごく一握りです。
しかしその一方で、FXで大きな資産を築いた人や、毎月のお小遣い程度を安定的に稼いでいる人も存在します。長年挑戦し、負け続けてきた私も、大勝ちこそないものの、ここ最近ようやく「大負けしない」「少しずつプラスで終われる」という兆しが見えてきました。
理由は「やってはいけないトレード」を減らせたからです。例えば、明らかに方向感が出ていないレンジ相場で無理にポジションを取らない、重要指標発表の直前に博打のようなトレードをしない、感情に流されてナンピンを繰り返さない──こうした自滅パターンを避けられるようになったのです。
そこでさらに一歩進めて、「やってよいトレードのタイミング」を効率的に見つけられたら、より利益を増やせるのではないか?と考えました。ただし、24時間チャートに張り付くことは不可能ですから、トレードする機会を効率的に見つける必要があります。例えば、もしAIがアノマリーを検出して通知してくれるなら、個人トレーダーでも少しはプロに近づけるのではないか、と考えるようになりました。
プロと個人のAI活用の違い
そうは言ってみたものの、個人がFXトレードでAIを活用しようとしても、そう簡単には実現できません。金融機関のプロトレーダーは、莫大な資金とデータ、そして開発チームを背景にAIを活用しています。一方、個人投資家は、データ、資金、ノウハウの面で制約をうけた環境でAIを使わざるを得ません。
以下にその違いを整理してみましょう。
項目 | プロ投資家 | 個人投資家 |
目的 | 巨額の利益、顧客資金の運用 | 生活費の補助、小遣い稼ぎ |
データ量 | 数十年分のティックデータ、市場全体のオーダーフロー | MT4/MT5から取得できる限定的なヒストリカルデータ |
インフラ | 高性能サーバー、低遅延回線 | 一般的なPCと家庭用光回線 |
AI開発 | 専門のデータサイエンティスト、専用ツール | ChatGPTやPythonライブラリを利用 |
投資額 | 数億円規模 | 毎月:数万円程度 |
この違いを踏まえ、個人が勝つためには「シンプルで再現性のある戦略」をAIにサポートしてもらうのが現実的だといえます。
Python vs. MATLAB ― AI活用のためのプログラミング言語選択
個人がAIを使ってトレードに挑戦する際、プログラミングのスキル取得は避けて通れません。特に、機械学習やディープラーニングを使った分析や戦略立案をするには、AI開発が得意なプログラミング言語を学ぶ必要があります。
現在、AI開発に適した言語として代表的なのが Python と MATLAB です。それぞれの特徴を比較してみましょう。
項目 | Python | MATLAB |
得意分野 | 機械学習、ディープラーニング、データ分析全般 | 数値解析、金融工学、シミュレーション |
コスト | 無料(オープンソース) | 有料(本体+Toolboxで数万円〜) |
習得のしやすさ | 豊富な教材と情報、初心者向け | 数式処理に強く直感的、ただし独自仕様が多い |
コミュニティ | 世界的に巨大で活発 | 学術・研究機関や金融業界に特化 |
拡張性 | 無限に近い、ライブラリが豊富 | 専用Toolboxを導入して機能追加 |
結論としては、自由度とコスト重視ならPython、精度と金融工学向けならMATLAB という棲み分けになります。ChatGPTなどの生成AIを使えば、プログラミング初心者でもコードを自動生成できるため、いずれの言語でも以前より学習のハードルは格段に下がっているといえます。
MATLAB Financial Toolboxとは?
FXトレード向けのAI開発においてMATLABを使うメリットのひとつが、専門分野に特化した様々なオプション機能が提供されていることです。FXトレードに関していえば、金融工学に特化した Financial Toolbox がそのオプションとなります。
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MATLABのFinancial Toolboxは、金融データの数学モデリングや統計的解析のための関数を提供します。各種コマンドが用意されていますので、Pythonのように長いプログラムコードを書かなくて良い、プログラム全体の見通しがしやすい点がメリットです。ローソク足チャートなどをコマンド1つで描けることはもちろんですが、時系列データの解析、ポートフォリオの最適化手法、バックテストの実行など、金融のプロでも使える機能が含まれています。
問題は導入のためのコストです。
個人利用の場合、ベースとなるMATLABのライセンスの他に、Financial Toolboxとそれに関連する2つのToolbox(オプション機能)を購入する必要があります。
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2025年9月時点の価格ですが、個人利用(Home)の場合、永続ライセンス(Perpetual)で、MATLAB本体が105ドル、その他に必要となるToolboxが各29ドルです。
製品名 | 永続ライセンス価格 |
MATLAB | $105 |
Financial Toolbox | $29 |
Optimization Toolbox | $29 |
Statistics and Machine Learning Toolbox | $29 |
合計 | $192 |
総額は192ドル、日本円で約3万円程度です。バージョンアップをせず、購入時の機能のままでよければ、初期投資3万円で永久に利用できます。決して安くはありませんが、金融工学に基づく高度な分析を個人で利用したいと考えるなら、投資する価値は十分にあると思います。
最初のステップ:チャートデータの入手
ツールについていろいろと説明してきましたが、AIを活用したトレードの第一歩は「データの入手」です。ツールを選ぶ前に、まずチャートデータを手に入れる必要があります。個人投資家が為替相場のチャートデータを入手する方法はいくつかあります。以下が主な方法です。
1. MetaTrader(MT4/MT5)
個人投資家が最も手軽に利用できるのが MetaTrader4(MT4)やMetaTrader5(MT5) です。MT4やMT5がつかえるFX会社と契約していれば、会社によって遡れる過去データの量に違いはありますが、無料でデータを入手できます。
2. FX会社のサイト
一部のFX会社は、会員向けに ヒストリカルデータやチャートツールを公開しています。例えば、OANDA証券は、特定銘柄のティックデータを1ヶ月ごとに分けて、過去10年分提供しています。
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一部の会社はAPIも提供しており、リアルタイムまたは過去データをプログラムから直接取得できます。
3. データ公開サイト
FX会社以外の情報入手元として、TradingViewなどのデータ公開サイトがあります。
TradingView では、Premium以上のランクの有料版であればチャートデータを自由にエクスポートできます。
またポーランド発のウェブサイト「Stooq」は、様々な金融履歴データを無料で配布しています。
TradingViewはリアルタイム性を重視しているのに対して、Stooqはあくまで履歴データの配布を主眼に置いています。またStooqは、データの取得本数は短めなので、例えば「 5分足データを過去10年にわたって分析したい」というようなニーズには応えられません。
いずれのデータも、CSV形式で出力されるため、PythonやMATLABに読み込んで分析可能です。
次の記事では、FXトレードにおけるAI活用の具体的なイメージについて、もう少し詳しく掘り下げていきます。